松阪牛について徹底解説!プロが解説する松阪牛の見分け方とは?

松阪牛について徹底解説!プロが解説する松阪牛の見分け方とは?

日本三大和牛の一つとして、全国レベルの知名度を誇るブランド牛である松阪牛ですが、実は意外と誤解されていることが多いように思います。


「松阪で生まれた牛が松阪牛?」「松阪牛は脂が多くて胃もたれする?」「A-5ランクの松阪牛が一番美味しい?」etc.


これらの解釈には、たくさんの誤解が含まれているんです。


せっかく松阪牛を召し上がっていただくなら、本場の松阪牛、上質な松阪牛を楽しんでいただきたい。また、昨今の健康ブームで、松阪牛を敬遠している方々にも安心して松阪牛を召し上がっていただきたい。


今回は、松阪牛の特徴、美味しさの秘密、松阪牛と呼ばれる基準など、松阪牛の魅力を誠心誠意お伝えしたいと思います。



松阪牛の読み方

松阪牛は「まつさかうし」「まつさかぎゅう」と読みます。「まつざかうし」「まつざかぎゅう」とは読みませんし、「松坂牛」も誤りです。(「坂」ではなく、「阪」です。)



松阪牛の特徴

当記事をご覧になられているということは、皆さん「松阪牛」というブランド名を一度は耳にしたことはあると思います。まずは、松阪牛が持つ、松阪牛ならではの特徴を紹介していきましょう。


①霜降り

松阪牛の最大の特徴は、やはりその「キメの細かいサシ(霜降り)」と言えます。霜降り肉ならではの柔らかい肉質、上質な脂肪の滑らかな舌触りが松阪牛の魅力です。



②香り

松坂牛の香り

お肉に限らず、食べ物を美味しくいただく上で、「香り」の要素は欠かせません。和牛肉に熱を加えた時に現れる香りを「和牛香」と言います。

松阪牛の和牛香は、甘くコクがある上品な香りで、美味しさを一層引き立てます。


では、これらの特徴から生み出される松阪牛の美味しさの秘密をより詳しく解説していきます。「脂っこいお肉はちょっと…」と敬遠されている方々にも知っていただきたい松阪牛が健康にも良い秘密もお伝えしますよ。



松阪牛はなぜ美味しいのか?

松阪牛を楽しむのであれば、やはり「和牛香」も楽しめる食べ方、すき焼きがオススメです。松阪牛の美味しさの秘密には以下のような特徴が挙げられます。


①香り

先ほども申し上げた「和牛香」。これは「霜降り肉である黒毛和種の牛肉」ならではの特徴です。輸入牛肉と比べて、香りの成分量が圧倒的に多いことが比較研究から証明されています。また、熱が低過ぎても、高過ぎても香りが弱まる特徴があるため、すき焼きで食べるのが最も香りが引き立つ食べ方と言えます。


②ヘルシー

霜降りが特徴の松阪牛ですから、「ヘルシー」という言葉に違和感を覚える方も多いかもしれません。

松阪牛がヘルシーである理由は、脂肪の質にあります。脂肪には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があり、松阪牛は一般的な和牛よりも「不飽和脂肪酸」を豊富に含んでいます。(もちろん輸入牛やその他の品種に比べても豊富です。)

不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを低下させ、血液をサラサラにする効果があるとされています。また、抗酸化作用によりガンや生活習慣病の予防効果も期待されています。(※あくまで適度な量を摂取することが前提です。)

松阪牛のすき焼きや水だき、あみ焼きなどは、本来ドカ食いするような料理ではありません。最高に贅沢なお肉を適度な量で楽しむことで、良質な脂肪を適度に摂取できるのです。また、コクのある上質な松阪牛は、普段より少ない量で満足していただけます。同じ霜降りでも、ただ脂っこく胸焼けするような脂ではなく、コッテリしつつも良質な満足感が得られることも松阪牛の魅力です。


ちなみに、不飽和脂肪酸の含有率は、肥育期間が長いほど高くなるという研究結果があります。後述する「特産松阪牛」は長期肥育が条件に含まれますので、美味しさに直結する不飽和脂肪酸がより多く含まれる松阪牛と言えます。



松阪牛の歴史

さて、ここからは松阪牛の歴史について少し触れていきたいと思います。

江戸時代、但馬国(現・兵庫県)で生まれた雌牛が農耕用に利用されていました。松阪近郊でもこれらの雌牛たちを購入し、活用していた経緯があります。

明治時代に入り、文明開化の世を迎えると、西洋の肉食文化が普及したことで牛肉を食べる文化が広がり始めました。松阪でも東京の料理店で牛肉の扱いを修行して帰郷した人たちが精肉店や肉料理店を開き、また彼らが肉牛の肥育技術を向上させていったことで松阪牛ブランドの基礎が築かれていきました。牛銀創業者の小林銀蔵もその1人です。(牛銀、小林銀蔵の歴史はこちら

大正時代から昭和時代初期にかけて、伊勢神宮への参宮経路の途中である松阪には多くの参拝客が訪れました。これによって、一気に松阪牛は全国にその名が知れ渡り、現在でも日本屈指のブランド牛として国内外の人々から愛されています。



松阪牛の定義とは?

松阪牛の定義とは

高級ブランドとして定着した「松阪牛」だからこそ、そのブランドを守るための定義が2002年に定められました。少し複雑に見えるかもしれませんが、上質な松阪牛ブランドを守って、お客様に安全安心に召し上がっていただくためにも、とても大切なことなんです。


「松阪牛」と認められるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。


①黒毛和種、未経産の雌牛(メスウシ)であること。

全国の和牛の大多数を占めるのが、この黒毛和種です。毛・爪・角まで全て黒一色。

脂肪交雑(霜降り度合い)、肉の色沢(色つや)、きめ細やかさなど、肉質が優れた遺伝子を持つ和牛です。松阪牛に限らず、神戸牛や米沢牛など、ブランド牛の多くが黒毛和種の牛になります。

また、未経産の雌牛であることも大切なポイントの一つです。とはいえ、近年では日本の牛肉市場は未経産の雌牛が中心です。他にも去勢された雄牛も流通していますが、未経産の雌牛の方が先述の不飽和脂肪酸の量や肉質のきめ細やかさにおいて優れていると言われています。


②松阪牛個体識別管理システムに登録されていること。

松阪牛に限らず、国内飼育の牛には原則として10桁の個体識別番号が登録されています。これによって、1頭1頭の個体情報や肥育農家情報、肥育日数、屠畜(とちく)日など、導入から出荷までのデータが詳細に記録されています。

松阪牛は日本屈指のブランド牛であるため、全国に流通する過程で産地偽装のトラブルが多発した歴史があります。お客様にとって安心・安全な松阪牛ブランドをお届けするために、必要不可欠な仕組みです。


③松阪牛生産区域(旧22市町村)での肥育期間が最長・最終であること。

 ※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、導入後の移動は生産区域内に限る。

松阪牛生産区域

松阪牛は松阪市の牛だけに与えられるブランドではありません。かといって、三重県全域の牛に与えられるわけでもありません。

「松阪市を中心とした旧22市町村に、旧松阪牛生産者の会会員を含んだ区域で育てられた牛」が松阪牛となります。また、生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、導入後は生産区域内でしか移動は許されません。結果的に、「生産区域での肥育期間が最長・最終」になるわけです。

ちなみに、旧22市町村とは、

松阪市、津市、伊勢市、久居市、多気町、明和町、飯南町、飯高町、一志町、嬉野町、白山町、香良洲町、三雲町、大台町、大宮町、度会町、小俣町、玉城町、宮川村、勢和村、美杉村、御薗村

の22市町村を指します。

これは区域が定められた2004年11月1日時点での市町村です。市町村合併により、生産区域に含まれない町村と合併した所もありますが、あくまで2004年時点で定められた区域が生産区域となります、(合併で増えたエリアは生産区域ではない。)

現在の市町村で表すと、

松阪市・明和町・多気町・玉城町・度会町・大台町の全域と、津市・伊勢市・大紀町の一部地域

が生産区域に該当します。


以上の条件を全て満たし出荷されたものが松阪牛です。



松阪牛の安心・安全へのこだわり

松阪牛の安心・安全へのこだわり

先述した「個体識別管理システム」を、もう少し詳しく紹介します。

今では、国のシステムにより国内飼育の牛、全頭に付けられている個体識別番号ですが、松阪牛においては国に先駆けていち早く松阪牛独自のトレーサビリシティシステムをスタートしました。

ことの発端は2001年に発生したBSE(狂牛病)問題でした。この時に農林水産省が実施した「全頭検査前の国産牛肉買い取り事業」。これを悪用した食肉関連企業による牛肉産地偽装事件が相次いで発覚し、大きな社会問題となりました。

この問題をきっかけに、お客様の牛肉に対する不安や不信感を解消し、安心安全で信頼できる松阪牛ブランドを守るために発足したのが「松阪牛個体識別管理システム」です。



①松阪牛の登録、データ収集方法

松阪牛は、松阪牛生産地域に導入後、すべてこのシステムに登録されます。

システムを管理運営する三重県松阪食肉公社の職員が直接牛舎まで行き、登録する松阪牛を全頭確認することで、牛の性別や生年月日、出生地だけでなく、名前や血統、肥育日数、農家の情報、えさの内容など36項目のデータが集積されます。

確実に現地に赴き確認するという丁寧な手法により、高い信頼性を担保しているのです。


②登録データの公開

先述した10桁の個体識別番号は、松阪牛証明書に記載されています。この個体識別番号を検索することで、誰でも松阪牛1頭1頭の情報を確認することができます。

松阪牛証明書はその名の通り一頭買いされた松阪牛に発行される証明書です。


松阪牛の個体識別番号による検索はこちら(http://www.mie-msk.co.jp/search?lang=ja)から



松阪牛の格付け

「松阪牛」と認められた牛肉の中にも格付けは存在します。

松阪牛に限らず、日本で取引される牛肉は、(社)日本食肉格付協会によって格付けが行われており、取引の目安となります。「A-5ランクの最高級牛肉!」といった宣伝広告をご覧になったことが皆様一度はあるのではないでしょうか。

格付けは歩留(ぶどまり)等級と肉質等級の2つの等級で表示されます。歩留等級がA〜Cの三段階、肉質等級が5〜1の五段階で評価され、その組み合わせで格付けが決まります。歩留等級の最高評価である「A」と、肉質等級の最高評価である「5」が組み合わされたものが最高格付けの「A-5」ランクになるわけです。

歩留等級と肉質等級については、また別の機会に詳しく紹介したいと思います。


さて、松阪牛証明書の「品質規格」という項目には、この格付けが記載されていることが多いですが、一部には格付けではなく、「特産」と記載されているものがあります。文字通り「特別な松阪牛」で、格付けとは別に特定の基準を満たした松阪牛のみが「特産松阪牛」と呼ばれるのです。(※特産松阪牛にも格付けの概念は存在します。)



特産松阪牛

特産松阪牛には、一般的な牛肉格付けでは評価できない「特有のおいしさ」があると言われています。主な特徴は以下の通り。

  • 肉眼で見えないほどのきめの細かいサシ(霜降り)
  • 見た目とは逆に、まろやかでくどくない脂の旨み
  • 常温で溶け出すほど脂肪融点がひときわ低く、とろけるような口どけ
  • おはしで軽く切れてしまうほどの柔らかな肉質
  • 甘く深みのある上品な香り
  • 赤身の部分は、色味が濃く、ぎっしり凝縮された肉のうまみ

    文章で見ただけでも魅力的な表現がたくさん含まれていますね。

    ここからは、一度はご賞味いただきたい松阪牛の中の松阪牛「特産松阪牛」について紹介していきます。


    ①特産松阪牛の歴史

    『松阪牛の歴史』でも申し上げた通り、松阪近郊では但馬地方(兵庫県)生まれの雌牛を役牛として導入していましたが、明治以降、肉食文化が広がったことにより、肉牛としても肥育されていくようになりました。

    この但馬地方産の雌牛は、長期肥育することで優れた肉質となる特徴があり、肉牛としても非常に魅力的な品種でした。そのため、但馬地方で生まれた牛を長期間肥育することが、松阪牛の伝統的な肥育方法として定着していきました。しかし、長い時代の流れの中で、松阪牛の定義が確立されブランドが守られるようになった反面、兵庫県産以外の牛も松阪牛を名乗れるようになりました。また、松阪牛であることの条件に格付けは含まれていないため、松阪牛の中でも品質の良し悪しは各販売店、料理店の目利きや方針に少なからず依存します。

    そこで昔ながらの松阪牛の伝統を継承し、より一層の肥育技術の向上を図るため、一定の条件を満たす松阪牛を「特産松阪牛」と呼び、一般の松阪牛と区別することにしたのです。


    ②特産松阪牛の定義

    特産松阪牛と認められるためには、次に挙げる2つの条件を満たす必要があります。


    兵庫県産の黒毛和種を素牛としていること

     ※雌牛であることは松阪牛であることの前提です。

    松阪牛生産地域において900日以上の長期にわたり肥育されていること


    先ほども申し上げた通り、兵庫県産の雌牛は非常に魅力的な肉牛です。

    松阪牛の中でも特に但馬地方をはじめとする兵庫県から、生後約8ヶ月の選び抜いた子牛を導入し、900日以上の長期に渡り農家の手で1頭1頭手塩にかけて肥育されたものを『特産松阪牛』と呼んでいます。つまり、月齢でいうと約38ヶ月以上の牛である必要があります。


    ③特産松阪牛の肥育

    特産松阪牛の肥育

    当然のことながら、牛を長く肥育することは、よりコストがかかることになります。また、牛が病気になったり、ケガをしたりするリスクも高くなります。

    特に、但馬牛は非常に繊細な性質を持った牛であり、環境の変化などで病気になりやすいと言われています。農家さんの言葉を借りるなら「但馬牛は他の牛とは全く違った生き物」と評されるほど肥育には細心の配慮が必要になります。

    熟練の農家さんが確かな知識と経験を駆使し、大切に大切に育て上げた牛が「特産松阪牛」であり、牛を生かしたまま時間をかけて美味しさを高めていく、ある意味「究極の熟成肉」とも言えるでしょう。

    このように、非常にコストや技術を要する肥育方法であるため、特産松阪牛の生産頭数は少なく、松阪牛全体の数パーセントしか存在しません。

    また、特産松阪牛は「国の地理的表示保護制度(GI)」に登録されています。

    ※国の地理的表示保護制度(GI)とは

    特定の地域にて、長年培われた特別な生産方法や気候・風土などの特性により、高い品質と評価を得ている産品の名称(地理的表示)を知的財産として国が保護する制度です。基準を満たした場合に、国が証明する認定マークとしてGIマークを付することができ、不正な使用に対しては、国が取り締まり、懲役や罰金を科されるなど、ブランドとして保護されます。


    ④特産松阪牛の魅力

    特産松阪牛の魅力

    先述の通り、松阪牛の中でも「特有のおいしさ」があると言われている特産松阪牛。その美味しさはもちろんのこと、召し上がった方々は、その口溶けに驚かれます。

    『松阪牛はなぜ美味しいのか?』でも述べた通り、松阪牛は不飽和脂肪酸を豊富に含んでいます。不飽和脂肪酸は、融点(脂肪が溶け出す温度)が飽和脂肪酸より低く、溶けやすい特徴があります。この不飽和脂肪酸は牛の肥育期間が長いほど含有率が高くなるため、通常の松阪牛よりも長期肥育が求められる特産松阪牛は特に不飽和脂肪酸の含有率が高い松阪牛なのです。

    さらに、最上部位である「特産松阪牛のロース」の舌ざわりは、口に含んだ途端、脂がサッと溶けるため、「とろけるような食感」、「飲める」と表現されるほど、独特な口溶けが味わえます。初耳だと誇大表現に聞こえるかもしれませんが、ぜひ一度体感していただきたい特産松阪牛の魅力の一つです。


    ⑤特産松阪牛と格付け

    よく誤解されるのですが、格付けの最高評価である「A-5」の上に「特産」があるわけではありません。特産松阪牛であることと格付けは別物です。特産松阪牛は特例として格付けしてもしなくても良いということになっているものの、特産松阪牛だからと言って、全てが最高の牛というわけではないのです。

    そのため、特産松阪牛を取り扱うお店は、各々が信頼できる農家さんと協力し、特別な餌や肥育方法などを相談し、試行錯誤を繰り返しながら特産松阪牛の中でも最高と言える肉質を追求し続けているのです。

    最後に、牛銀が信頼する農家さんと積み上げてきたこだわりを紹介したいと思います。



    牛銀と農家のこだわり

    特産松阪牛は、その上質な肉質や希少性から、高額な値がつきやすいのは確かです。「松阪肉牛共進会(※松阪牛のコンテスト)」で1位に輝いた松阪牛がよくマスコミにも取り上げられ、セリ市での超高額な落札価格が報道されています。

    しかし、それは松阪牛の一側面に過ぎません。

    先述の通り特産松阪牛となる但馬牛は非常に繊細で肥育が難しく、さらに長期肥育をする必要があることから、通常の松阪牛と比べて非常に高いコストを要します。肥育技術の向上により年々減少傾向ではあるものの、特産松阪牛の条件である900日以上の肥育期間を満たせず死んでしまうこともあります。子牛の買い付けから肥育、出荷までのトータルで考えた場合、けして儲かるとは言えないのです。


    では、特産松阪牛を育てる農家の方々は、なぜそこまでのリスクを負って特産松阪牛にこだわるのでしょう。いささか古風な言い回しかもしれませんが、そこには特産松阪牛農家としての誇りとプライドがあるのだと思います。


    牛銀では、一時的な宣伝のためではなく、年中特産松阪牛をご用意できるように月1〜2頭の特産松阪牛を1頭買いしています。希少価値が高く、高価な肉ではありますが、真に上質な松阪牛を提供するために、妥協してはならない部分だと考えています。

    ここでは、当店が信頼する3つの農家さんを紹介させていただきます。


    ①谷岡畜産

    谷岡畜産

    松阪市大黒田町の肥育農家さんです。公式には当代で3代目となる農家さんですが、おそらくもっと古い先祖から農家を営まれているようです。

    10年かけて探し出した良質のチモシー(牧草)など、長い年月をかけ探求に探求を重ねた独自配合の飼料を、牛の体調や気候の変化などに合わせ調整する細やかな肥育を実践されています。



    ②畑畜産

    畑畜産

    多気郡多気町の肥育農家さんです。こちらも当代で3代目。

    先代から伝授された目利き技術で、たとえ他より高値でも良質な子牛を買い付ける方針を貫かれています。900日を超えて、更なる長期肥育にも挑戦されている農家さんです。


    ③栃木畜産

    栃木畜産

    松阪市飯南町深野の肥育農家さんです。こちらの栃木治郎さんは御年89歳。70年以上牛を扱い続ける松阪牛の生き字引ともいえる方です。

    牛の育て方はもちろんのこと、「松阪牛」というブランドが現在の形に至るまでの歴史、乗り越えてきた課題とその生涯をかけて向き合ってきました。その中で、現在松阪牛ブランドが抱える課題にも真摯に向き合い、昔ながらの松阪牛の魅力、本質的な価値を言葉だけでなく、その肥育技術を持って体現していただけている存在です。



    本記事を執筆するにあたり、この3つの農家さんに取材を行い、それぞれが抱く松阪牛ブランド、そしてご本人たちの生業への想いを伺いました。本記事の内容には、農家さんからお聞きしたことから得た知識や我々が感じ取ったことも多分に含まれています。


    松阪牛の肥育方法は、確立されたマニュアルがあるわけではなく、各肥育農家さんが長い歴史の中で培ってきたものです。だからこそ、我々牛銀がお客様に最高の松阪牛を召し上がっていただくためには豊富な知識と経験を持ち、常により良い肉質を追求し続けている農家さんと協力することが必要不可欠なのです。


    もちろん、農家さんにとっても当店が信頼に足る相手であり続けることが当然の責務です。開業当初から但馬産の牛にこだわり続けた信念、歴史情緒溢れる建屋、そして何より松阪牛の活かし方を熟知していると言っていただけている、その信頼を守り続けることが我々の使命です。


    最後に、当店とタッグを組んでいただいている3つの農家さんは、それぞれが松阪牛の肥育における匠です。我々が理想とする肉質をお伝えした上で、それぞれの農家さんならではの知識や技術を活かし、環境や餌など試行錯誤を繰り返しながらお互いが納得できる特別な松阪牛を追求し続けています。


    当店が自信を持って提供する最高品質の松阪牛からは、それぞれの農家さんによって微妙に異なる味わいを感じていただけるかもしれません。そういった農家さんの工夫に想いを馳せながら、二度三度と松阪牛を味わっていただければ、これほど嬉しいことはございません。

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